2020年7月16日木曜日

翼よ!あれが巴里の灯だ


☆☆☆★★ ビリー・ワイルダー 1957年

単独での無着陸大西洋横断飛行を成し遂げ
たリンドバーグの成功譚を映画化。それは
つまりニューヨークを出発してからパリま
で、交代なしで33時間ひたすら飛びつづけ
るわけで、これをまともに描くとただ睡魔
と闘っているリンドバーグをコックピット
内で写し続けるだけになってしまうのだが、
そこは脚本の腕の見せどころ。脚本家出身
のワイルダーは135分、まったく退屈させ
ない。

リンドバーグを演じるのはジェームズ・ス
チュアート。
まず出資者を募り、大西洋を横断できる飛
行機を作るとこから始めなければならない
のだが、大手の航空機会社の提示した条件
に納得できず、田舎の町工場みたいなとこ
に任せることになる。ここが『紅の豚』み
たいでいちばんワクワクする。鷹揚な社長
と腕のたしかな技術者がいて、ひさびさの
大口の注文に湧きたってみんなでわいわい
作るのである。きっと宮崎駿もこの場面が
好きだったに違いない。

ようやく歴史的な単独飛行を開始してから
も、まだ上映時間は60分以上ある。モノロ
ーグで主人公の考えを垂れ流しながら睡魔
と闘ったり、上空の冷気で機体にトラブル
が起こったりするのは、まあ誰でも考えつ
く事で、それだけでは間がもたない。工夫
のしがいがあるというものだが、ワイルダ
ーはコックピットに迷い込んだ蠅を話し相
手にしたり、出発間際に女の子にもらった
手鏡をうまく使ったり、回想をはさんだり
と、ほんとうに脚本の手本のような構成に
うならされる。

                           7.9(木) BSプレミアム



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