2020年7月8日水曜日

読書⑰


『塩一トンの読書』
須賀敦子 著   河出文庫

一見奇妙な題は筆者のイタリア人の義母
の言葉に由来する。
 「ひとりの人を理解するまでには、す
  くなくも、一トンの塩をいっしょに
  舐めなければだめなのよ」

なかなか面白い表現だと思うが、もとも
とは夫婦について言われたこの言葉を、
読書に、それもとりわけ古典を読むとい
う営為に当てはめたものがこのタイトル
なのである。

イタリア、フランスの小説・映画の話題
が豊富で、いわゆる「そそる」書評がう
まい。一方で、腰を据えて『細雪』を論
じた文章もあり、「読書の歓び」を共有
するようでとても楽しい。






『街場の読書論』
内田樹 著   潮新書

「読書」「書評」や「著作権」「リーダビ
リティとは」について、ブログや雑誌等に
寄稿した文章を集めた、いつものコンピレ
ーション本。新書版にしてはかなり大部で
はあるが、1つづつは短いのでコツコツ読
める。総じてとてもおもしろかった。この
人の文章がおもしろいのは、全面的に賛成
できない論旨であってもそれなりに「読ま
せる」ことだろう。

後半にまとまっている著作権に関する一連
の意見表明。本を書く人間にとっての、
「読者と書籍購入者」の違いをめぐる話は、
最初は「いやー、そうは言っても」と思っ
たのが、繰り返されるにつれて「うーん。
そうかもしれん…」と思ってしまう、いと
も与しやすき私。

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