2020年5月4日月曜日

読書⑩


『感情教育』
フローベール 著 太田浩一 訳 光文社古典新訳文庫

こういう仏文に行ったひとしか読んでないよ
うな本(失礼!)を読む日がくるとは思わな
かった。
本を開くと、訳者の気合いがすごい。まずは
小説の時代背景となっているフランス革命以
後から1880年ぐらいまでのフランスの、激動
の、そしてそのぶん入り組んだ政治をざっと
レクチャーしてくれた上に、上巻は少しかっ
たるく感じるかもしれないけど、下巻はめく
るめく展開が待ってるから、あきらめないで
読んでくださいね! というような趣旨のこと
まで書いてある。「とにかく読んでほしい」
という想いに打たれる。ここまで言われたら
意地でも読むぜ。さいわい時間なら、死ぬほ
ど…。
読み始めると、ものすごい数の註釈がある。
政治家、芸術家の人名はもちろん序の口で、
パリの通りの名前、当時のレストランや劇場、
果ては家具調度や服飾の詳細に至るまで、よ
くぞここまで調べたな、という感じ。まあフ
ローベールはこういう当時の風俗のディテイ
ルを克明に描いたのが魅力ということなんで、
手を抜くわけにいかなかったのだろう。

しかしどーも私は…。申し訳ないけど、フラ
ンス文学に登場する青年の行動と考え方に、
どーもなじめない。この小説の主人公、フレ
デリック・モローも例外でない。いちいち絶
望するのが早すぎるし、希望をもつ時も安易
すぎる。一喜一憂しすぎなんじゃないかと思
うのだが、どうだろう。この小説の肝はもち
ろん、フレデリックのアルヌー夫人へのプラ
トニックな愛なのだが、なんだかつまんない
ことに拘っていたかと思うと急に恋の炎に急
き立てられてとんでもないことをしだすし、
なんだか「えー」と思うことが多いのである。
実は似たようなことは『赤と黒』のジュリヤ
ン・ソレルにも思ったし、『狭き門』のジェ
ロームにも思った。









『ゴンちゃん、またね』
ビートたけし 著   文藝春秋

ライターとして働く主人公と、ゴンちゃんと
いう柴犬をめぐる短くも、せつない小説。
余韻がいい。

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