2020年8月17日月曜日

読書⑲


『夜想曲集』
カズオ・イシグロ 著 土屋政雄 訳 ハヤカワepi文庫

音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

サブタイトルにある通り、必ず音楽がスト
ーリーに絡んだ5つの短篇から成っている。
巻末解説によると、欧米とくにヨーロッパ
では短篇小説のマーケットは長篇小説のそ
れに比べて格段に小さく、読者のニーズは
圧倒的に長い長い小説にあるのだという。
ふーん、そんなものかと思うけど、本書の
短篇はどれも趣向が凝らされていて、あっ
という間に読めてしまう。ほどよい軽みが
あって、でも頭に焼き付くようなシーンが
必ずある、よくできた短篇集である。「老
歌手」の延々とゴンドラに乗っている描写
もけっこう強烈だが、私は売れないサック
ス奏者を主人公にした「夜想曲」がおもし
ろかった。





『街場の親子論』
内田樹 内田るん 著   中公新書ラクレ

父と娘の困難なものがたり

ふた昔前ならいざしらず、いまどき往復書
簡を本にするというのも珍しい。まあでも
親子の間の長年の複雑な感情なんかをあぶ
り出すには妥当な手法かもしれない。普通
の親子だったら読まなかったと思うが、こ
の親子だったので手に取った。

まえがきで内田樹が「微妙に噛み合ってな
い」ところがあると思うが、親子ってそん
なぴたぴた話が合わなくてもいい、と書い
ている。まあそうかもしれないが、読んで
ておもしろいという種類の本ではないかも
しれない。



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