2021年1月14日木曜日

読書①


『君たちはどう生きるか』
吉野源三郎 著   岩波文庫

日中戦争につながる軍事的緊張が高まってい
た1937年、『日本少国民文庫』の「倫理」
を扱う1冊として、山本有三の代わりに吉野
源三郎が執筆したという本書。私はてっきり
内容が難しいからしょうもないマンガ版が出
回っているのかと思っていたが、読んでみる
とそんなことはなくて、昭和初期の風俗や考
え方の現代との違いはあれど、とても読みや
すい。

幼くして父を亡くした中学生の「コペル君」
と、彼の人間的な成長を温かく見守る「お母
さん」「叔父さん」とのやりとり、そして叔
父さんがつけている「ノート」が章の終わり
にはさみ込まれる構成となっている。
巻末には丸山眞男による「『君たちはどう生
きるか』をめぐる回想」が付戴されていおり、
当の中高生読者には要らない部分かもしれな
いが、ある程度の大人が読むに際してはこち
らの方を読むために本書がある、という側面
も半分くらいはあるのではないか。










『見るレッスン 映画史特別講義
蓮實重彥 著   光文社新書

あまり好きになれない批評家だし、映画の好
みも全然違うと分かっていながらも、やはり
最近の映画について何を言っているかは気に
なる。絶賛されている映画は観たくなるし、
好きな監督がくそみそにけなされると「けっ」
と思いながらも、ふと冷静にその監督の作品
群を思い浮かべてしまう。
「新しい映画に驚きたい」「最前線に触れて
いたい」という思いは、御年83歳になっても
まったく衰えを知らず、本書で切り捨てられ
ている面々には山戸結希やソフィア・コッポ
ラや西川美和やスコセッシなど、私の少なか
らず評価する監督も多く含まれているが、あ
きらかに蓮實氏の方が私よりも多く観ている
ので、こういう時は本数がモノをいうという
面も残念ながらある。

近年のハリウッドではデヴィッド・ロウリー
がいたくお気に入りのようで、何度も何度も
執拗に称賛されている。国内だと小森はるか
と小田香、三宅唱がお好きらしい。私はこの
中だと『きみの鳥はうたえる』(三宅唱)1本
のみかな…。

あとがきで、これまで新書を出していなかっ
た理由を「大学院時代にふと買ってしまった
丸山真男の『日本の思想』という短い書物の
あまりの趣味の悪さに嫌気がさしたことが、
トラウマになっていたのかもしれません」な
どと相変わらずの憎まれ口を忘れずに叩いて
いたので、あえて『君たちはどう生きるか』
と並べてみました。さぞかし嫌がるだろうと
思いまして。




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