2021年10月6日水曜日

読書⑬


『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ 著   新潮文庫

名門の小学校から、わりと自由な校風の、
「昔は荒れてた」中学校に、自ら望んで入学
した息子。その学校生活と、クールな言動を
もとにしたエッセイ。この文章が物珍しいの
は、それが日本の中学校ではなく、英国南端
のブライトンという街だからということもあ
ろう。レイシズムと貧富の格差をここまで冷
徹に肌身に感じることは(少なくとも私の学
校生活には)なかったが、なかなかタフなこ
とであるように見える。いまだに人種をめぐ
る地雷を踏んでしまう母親と、それを意外に
ヒョイヒョイかわしていく息子の身の軽さが
本書のおもしろさであると思う。

しかし「うちの息子がこんなおもしろいこと
言いました」という文章には強烈な既視感が
あり、それは心当たりというか小沢健二のツ
イートであることは明白なのだけれど、この
2つが奇妙に似通っているように見えるのは
なぜなのか。












『女ぎらい ニッポンのミソジニー
上野千鶴子 著   朝日文庫

往復書簡がすこぶるおもしろかったので、何
か上野千鶴子の文庫本はないかなーと探して、
朝日文庫の棚で発見。買ってすぐに読んでし
まったのは、このひとの文章のざくざくとし
た小気味よさが読んでいて気持ちいいからだ
と思う。自分にも身に覚えのあることを鋭い
刃物のような批評でえぐられる文章が、私は
けっこう好きみたいである。

皇室を、吉行淳之介を、「母の娘」としての
女を、「父の娘」としての女を、そして2章を
割いて「東電OL」を分析していく。本書では
常にホモソーシャル、ホモフォビア、ミソジ
ニーの3点セットで、あらゆる事象を読み解く
ということを試みる。

文庫版増補として「諸君! 晩節を汚さないよ
うに」を収める。「セクハラ」という行為を
概念化し、可視化し、社会的な罰を与えられ
る罪として「常識化」していく。さながら上
野千鶴子の戦史である。


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