2021年8月18日水曜日

竜とそばかすの姫

 
☆☆★★      細田守     2021年

さっぱりおもしろくなくて、2時間のあいだ、
一度もワクワクすることはなかった。どうし
てこうも細田守の映画はつまらなくなってし
まったのか。

今回特に思ったのは、たしかに作品の肝とな
るようなシーン、歌のシーンだとか派手なア
クションシーンに力(と予算)をかけている
のは伝わってくるし、そのやり方は間違って
いないと思う。しかし、そこに至るまでの物
語的な「助走」の過程に穴がありすぎて、観
る側の気持ちがノッていくどころかしぼむ一
方であり、そこに満を持して派手なシーンが
来てもことごとく空振りに終わっている。
ここが映画の勘所だ、ここに予算と人員をぶ
ち込め!という号令の元、作られたと思しき
シーンが、空々しい、上滑りの印象しかない
のだ。

今回は『サマーウォーズ』を彷彿させるネッ
ト上の仮想空間<U>が舞台で、まさに細田守
の得意分野のはずである。たしかに絵はキレ
イなのだが、まずこの仮想空間がどういうも
のなのかがよく飲み込めない。世界中とつな
がっているはずなのに、話しかけてくるひと
はみんな日本語で、こちらの日本語も必ず通
じる。勝手に翻訳されるということか。
高知に住む一介の女子高生の"歌"が、<U>で
爆発的な人気になるという導入部なのだが、
リアリティというか、「この子たちならあり
得るかも」という感じは皆無。まあたまたま
良い曲を作詞・作曲できたとしても、はじめ
から華麗なアレンジがなされているのは不思
議だ。誰が編曲したのだろうか。「うちで踊
ろう」みたいに、ネット上のみんながアレン
ジを加えていくような描写があった方がよかっ
たのではないか。そもそも、細かいことだが
のちのシーンで歌っているときにヘッドホン
は付けているのにマイクがどこにも無い。あ
れでは歌が録れないだろう。
まだ不満はある。仮想空間に神出鬼没の"竜"
というキャラがいて、イベントを荒らしたり
暴力をふるったりするのだが、竜が普段は豪
奢な城に住んでいて、そこは完全に<U>の利
用者からは隔絶されていて、自警団がいくら
探しても見付からないというのも、どういう
ことなのか分からない。いちユーザーにそん
なことが出来るのか…。さらにそのキャラは
<U>の中では向かう所敵なしの恐るべき身体
能力を誇るのに、現実世界ではただのひ弱な
少年で、中年男ひとり倒すことができない。
いったい<U>でのあの身体能力は何が反映さ
れるのか。現実での身体能力とは関係なく、
eスポーツみたいなものかというと、別に何か
専用のコントローラーを操作している様子も
ない。狐につままれたような気分。

…という感じで、観終わった直後に怒りにま
かせてメモしたのを冷静に文章化したのが、
ここまでの記述です(笑)。

『バケモノの子』以降、1作ごとにひどくなっ
ていく。それは「脚本」に細田守ひとりしか
クレジットされなくなったことと無関係では
ないだろう。それも多くのひとの指摘すると
ころである。次作はぜひ、原作ものか共同脚
本にすべきと考える。

                             7.22(木) 新宿バルト9




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