2021年5月17日月曜日

愛と希望の街

 
☆☆☆     大島渚   1959年

大島のデビュー作である。
もともとは『鳩を売る少年』というタイトル
だったのを勝手に改題されて公開され、大島
が激怒したという。
物語は鳩を売る貧しい少年と、同情心でそれ
を買った金持ちの家の娘との交流を描く。も
ちろんそこには貧富の差というだけではない
「冷厳なる壁」が存在し、ふたりがそれを乗
り越えることは決してできない。60分余りの
中編ながら、ずしんとくる重さの映画である。

これにて、大島渚祭りは終わり。
全部で9本(1本はアマプラで観てしまったが)
を観て思ったことは、本当に幅広く、難解な
のも分かりやすいのも、政治的なのも俗物的
なのも、真っすぐなのもひねたのも、大物俳
優が主役でも素人に命じて芝居をさせても、
とにかく「なんでも撮れる」ひとだったのだ
な、ということだ。私はそういう映画監督の
ほうが信用できるし好きである。そして、
『戦場のメリークリスマス』って実はあんま
り面白くなかったよな、ということも思う。
やはり脚本だろうか。
大島のキャリアを代表させる3作を選ぶなら、
私は『青春残酷物語』『絞死刑』『儀式』
と答えることにする。あ、はやいとこ『愛の
コリーダ』観とかないと…。

                            4.23(金) シネマヴェーラ




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