☆☆☆★★★ 宮崎吾朗 2011年
申し分ない。よかった!
高校生による純愛物語である。企画・脚本は親父。細部まで行き
届いたさすがの脚本で、作品の出来としては「耳をすませば」より
も好きかもしれない。
良い方向に「意外だったこと」として、まずは長澤まさみの声優とし
ての優秀さを挙げたい。女優として声が良いと思ったことは今まで
一度も無いが、実は声優向きだったのか、本人の努力・工夫の結
果なのかは分からないが、とても良い声だった。あの声がヒロイン
の性格にマッチしていたかは別としても、素晴らしかった。思わず
聞き惚れてしまった。
原作は別の時代設定らしいが、宮崎駿は敢えて1963年、東京オリ
ンピックの前年の横浜を舞台とした。まったく同じ年・場所を舞台に
した映画がかつてあった、とは小林信彦の指摘するところ。それは
黒澤明の「天国と地獄」で、あの作品では丘の「上」の豪邸と「下」の
貧しい庶民とが明確に対照され、作品の重要なカギとなっていた。
本作でも「コクリコ坂」の上の住人である「海」と、坂の下の住人であ
る「俊」との差は、はっきりと明示されているわけではないが、それと
なく仄めかす描写もある。
話は変わるがシネフィルの特徴のひとつとして、何の不満もない完璧
なショットを見せられると、それだけで泣けてくるというのがあるらしい。
私は(幸い)そこまでの域には達していないが、宮崎駿の一連の傑作群
を観ていると「目頭が熱くなる」の一歩手前の、なんだか鼻の奥がツン
とする予感めいたものがずっと持続することがある。本作を観ながら、
その予感がずっとしていた。良い映画だった。
7.29(金) ワーナーマイカルシネマズ釧路
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