2011年8月1日月曜日

無法松の一生

☆☆☆★★★     稲垣浩     1958年

秀作。
無法者の「松五郎」のキャラクター一本で勝負する潔い映画。
つまり三船の演技にすべてがかかっているといって過言でない。
三船敏郎は器用な役者だなと、また思った。色んな役ができるし、
何をやっても存在感がある。「酔いどれ天使」や「七人の侍」の菊
千代の印象が強いが、「生きものの記録」の水爆を恐怖する老人
や「天国と地獄」の豪邸に住む金持ちの役もすばらしいと思う。

黒澤明が、オーディションに落ちかけていた三船敏郎をゴリ押しで
合格させた時のエピソードが私はとても好きで、要約すると以下の
ような話なのである。

黒澤が会社で脚本の推敲か何かやっていると、高峰秀子がやって
きて、「オーディションになんだかすごい人が来てるのよ」という。見
に行くと、ちょうど参加者に「怒る芝居」をさせているところだった。
参加者が順番に怒った声で演技をしていくわけだが、ひとり演技な
のに本当に恐いやつがいる。与えられたセリフを怒鳴っているだけ
なのに、なんだか自分が怒られているような気がして、肝が縮む。
これはなんだかすごい、と思って上層部にかけあい、無理に合格さ
せた。それが三船敏郎だった、という話。

昔の映画は音が悪いので怒鳴ると何を言っているか全然わからな
いことが多いが、そう思って聞くと三船の怒鳴る声はたしかに恐い。
怒鳴り声が恐いからってそれが映画にどうプラスなのかまでは分か
らんが(笑)

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