2011年8月10日水曜日

異人たちとの夏


☆☆☆★★      大林宣彦     1988年

夜になるとほとんど住人が居なくなるマンション、雨の夜に
突然シャンパンをおすそ分けにと現れる若い女、今の自分
より若い頃の父親と遭遇する浅草の寄席、他人にはやつ
れて見えるが自分にはそうは見えない顔、そして例の身の
毛もよだつラスト…。
「異人たちとの夏」と聞くと、原作の場面がわりあい鮮やか
によみがえってくるので、それらを余さず、適切に映像化し
てくれていて嬉しい。しかし、それだけに終始していては、
凡庸な映画化に終わってしまうだろう。本作の監督は誰で
すか、大林宣彦ですよ。単なる「映像化」で終わらすわけが
ない。とにかくいつでも「仕掛けてくる」ひとなので、「このカッ
トおもしろいな」「…これは、どうなんだろう」とカット毎にニヤ
ニヤしてしまう。観ていて楽しい。

片岡鶴太郎が父親役。これがまことに良い。声が良いんだ
ね。江戸っ子の板前の設定で、ぴったりだった。風間杜夫
が主役の脚本家。まあ悪くはないんだけど、あんま脚本家
には見えなかった。いつかの水道局の役人のほうがずっと
似合ってたね。

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