2021年9月5日日曜日

息の跡

 
☆☆☆★★   小森はるか   2017年

早稲田松竹にて、蓮實重彦が『見るレッスン』
で絶賛していた小森はるかの2本立て。当日
はあいにく豪雨。これでおもしろくなかった
ら金返してもらうからな、と息巻いてズボン
をびしゃびしゃにしながら観に行く。

小森はるかは、東京藝大を出たあと、画家で
作家の瀬尾夏美とともに、震災後の陸前高田
市に移り住む。そこで出会った「たね屋」の
おじさんにカメラを向け、対話しながら(ほ
とんど相槌だけの時も多いが)、その営みを
写し取ったのが本作。撮影時は津波で流され
た店舗の跡地にプレハブを建てて、種苗店を
再開していた佐藤貞一さん。最初はただの東
北の田舎のおじさんにしか見えないが、なぜ
この人物にカメラを向けるのかは、だんだん
と分かってくる。
当初、小森は自分の声が入っている部分を本
編で使うつもりはなかったらしいが、編集の
秦岳志(佐藤真のいくつかの作品をつないだ
人物!)が本編に入れるよう提案したという。
実は本作でおもしろかったのはこの小森の声
だったりする。

                                8.15(日) 早稲田松竹




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